「この子を残して逝けない」ペットのための終活|信託・遺言・老犬ホームという選択肢

この子を残して逝けない」ペットのための終活|信託・遺言・老犬ホームという選択肢

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ペットは大切な家族の一員です。また、かけがえのないパートナーでもあります。そのため現在は「人間が亡くなったときに、その前に亡くなったペットと一緒に埋葬できる霊園」などの選択肢も提示されるようになりました。

ただ、ペットを先に見送るのではなく、飼い主の方が先に亡くなってしまうこともあります。そのようなときにはペットはどうなるのでしょうか。また、ペットを「家なき子」にしないようにするためには、どのような方法が考えられるのでしょうか。

自分が先に亡くなったら、ペットは相続人が引き継ぐ

飼い主が先に亡くなった場合、ペットは相続人が引き継ぐことになります。たとえば配偶者や子ども、孫などです。
ペットは共有財産として扱われるのですが、ペットは動産などとは違い分割して相続することはできません。そのため、遺産分割協議などを行い、相続する人を決めることになります。
もっとも理想的な相続のかたちは、「飼い主が亡くなったときのことを想定して、生前から一緒に住んでいるもしくは頻繁に顔を見せてペットに懐かれていた相続人が引き取る」というものでしょう。

ただ、相続人と被相続人の関係が良好なものであったとしても、このようにできるケースばかりではありません。たとえば、「相続人である子どもはすでに犬を飼っている。残されていく老猫との同居は難しい」「ペット不可のアパートに住んでいる」「孫がアレルギーなので、動物は引き取れない」などのケースは非常によくあります。
そのため、ペットを託せる人がおらず、自分自身が先に亡くなるかもしれないという場合は、ペットの「行く末」を考えておく必要があります。

なお、かつて世界的なデザイナーとして知られたカール・ラガーフェルドは、愛猫であるシュペットに遺産を渡したと報道されましたが、日本ではペットは法律上はあくまで「物」として扱われるため、ペットに直接遺産を残すことはできません。

「家なき子」にしないためにできること

では飼い主は、ペットを「家なき子」「引き取り手のない子」にしないためにはどうすればよいのでしょうか。

遺言書を作成する

まず考えられるのが、「遺言書にペットの世話について盛り込んでおく」ということです。
下記でも触れますが、ペットの所有権は、相続・遺贈によって残していく人に移すことが可能です。
遺言書の効果は非常に強力なものです。ただその遺言書を以てしても、ペットの所有権を移すことはできても、その世話のやり方などを法的に指定することはできません。たとえば、「飼い主と同じように、毎食手作りの食事をあげてほしい」「亡くなった際は、私(飼い主)と同じ墓地に埋葬してほしい」などの言葉は、強制力を持ちません。
「希望」として伝えることはできますが、それを実現するかどうかは相続した人に委ねられます。

負担付遺贈もしくは負担付死因贈与を行う

遺言書でペットの世話をする人を指定するのもひとつの方法ですが、さらに確実性の高い方法として

  • 負担付遺贈
  • 負担付死因贈与

の2つがあります。

先に挙げた、「遺言書でペットの世話を頼む」という方法とは違い、この2つは「ペットの世話をすることを条件として、財産を渡す」とするものです。
負担付遺贈の場合は、「ペットの世話をする代わりに、財産(預金など)を残す」とするもので、この場合はペットの世話を義務化させることができます。「ペットの世話をしなければ、財産は使えない」としているからです。
ただ負担付遺贈は、世話を託された人が、「財産はいらない、その代わりペットの世話もしない」と言うことができます。つまりこの方法であってすら、確実性はありません。

さらに確実性を高めたいのであれば、「負担付死因贈与」がおすすめです。これは遺産を渡すことと引き換えにペットの世話を託すという点では負担付遺贈と同じですが、負担付死因贈与は「ペットの現在の飼い主と、相続する人の間で、相互の合意が必要となる」という点で異なります。
負担付贈与の場合は現在の飼い主が一方的に「世話を受け継ぐ人」を指定するものですが、負担付死因贈与は現在の飼い主と世話を受け継ぐ人両方の合意に基づいて行われる契約行為です。そのため、世話を受け継ぐ人が一方的にその世話を拒否・放棄することはできません。

このため、確実性を考えると、

  1. 遺言書で(財産の相続などを特に定めず)、ペットの世話をする人を一方的に指定する
  2. 負担付遺贈で、財産の相続をすることを条件として、ペットの世話をする人を一方的に指定する
  3. 負担付死因贈与で、ペットの世話をする人を互いの合意の下で指定する

の順番になるといえます。
なお負担付遺贈に関しては、遺言執行者を指定することで確実性を増すことは可能です。これは、「遺言がしっかり守られているかどうか(この場合は主に、ペットの世話がちゃんとされているかどうか)」を確認する人のことを差す言葉です。負担付贈与を受けたにも関わらず、ペットの世話がされていないと遺言執行者が判断した場合は、きちんと世話をするように催告ができます。またそれでもなお改善されない場合は、裁判を経た後に、遺贈を取り消させることもできます。

ペット信託を使う

ペット信託とは、「飼い主が亡くなった後でも、ペットの面倒を見てくれるように人に頼む信託制度」のことをいいます。ペット信託の場合は、信託制度を利用することになるため、ペットの飼育以外に財産が使われることはありません。そのため、「確実に」ペットの世話のために財産を使うことができます。負担遺贈・負担付死因贈与とは、この点で大きく異なります。さらに、ペットが亡くなった後に、残った財産をさらにだれに引き継がせるかも決められます。

ただこの方法は非常に煩雑であること、また世話をしてくれる人を見つけて信託契約書を締結しなければならないこと、比較的多額の費用がかかるケースが多いことなどが問題となります。

ペット後見互助会の利用

現在、広がりを見せているのが「ペット後見互助会」の取り組みです。これは非営利団体が行っているもので、「飼い主が介護や入院が必要になったときや死亡した場合に、互助会が引き取り手を探す」というものです。また、引き取り手が見つからなかった場合は、飼育施設でそのペットが天寿をまっとうするまで面倒をみる、としています。
これは無料で使えるものではありません。
入会金や事務手数料、月額費用、修正飼育費用などが必要となります。
ただ遺言などを経る場合とは異なり、相続人を指定できない・相続人がいない・相続人に断られるであろうという場合にも使える方法だといえます。

どうしても引き取り手が見つからない、育てるのが難しいときにはどうするか

ペットは、飼い主が責任を持って面倒を見るべきです。
しかしどうしても引き取り手が見つからず、また法律的な手続きをとることもできずに入院などを余儀なくされ、さらに費用も確保できないなどの状況になったときは、老犬ホームなどに事前に預けることを検討すべきです。
また、「心情的には引き取りたいが、どうしても残されたペットの世話をできない」「あらゆる選択肢を模索したが、残されたペットの世話を引き継ぐ人がいない」という遺族側の立場になった場合は、NPO法人などに相談をしてください。
ペットは、家族であり命です。それを放棄することは、だれであっても許されていません。残していく側も残された側も、ペットの「行く末」を考えて、あらゆる手を尽くすべきです。

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