自筆証書遺言の作成方法 作成の負担が激減?

遺言書の画像

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自らの財産の処遇を伝えるための遺言にはいくつかの方法があります。

いずれも所定のルールに則って作成することが求められていますが、その中の「自筆証書遺言」に関する法律が2019年に改訂されました。

ここでは、法改正後における自筆証書遺言の作成方法について解説しています。

遺言について

遺言とは自分の財産をどのように分配・活用してもらうかを相続人へ伝える、いわば最後の意思表示です。

本記事において遺言とは、口約束や覚え書きではなく民法で定められた形式に添って作成されたものを指します。

遺言書に記載できる範囲は、

  • 子どもの認知
  • 遺産分割
  • 相続分の指定
  • 相続人の廃除
  • 遺贈
  • 寄付
  • そのほか法律によって定められたもの

に限られています。

特に財産の分配については被相続人が努力して築いたものですから、遺言書の内容が尊重されます。

法律で定められた相続割合に添わない内容であっても、基本的には遺言書の内容が優先されると考えれば良いでしょう。

遺言執行者に選任された者は、遺産分割協議を行わずに遺言書に従って遺産相続手続きを行うことができます。

遺言書は、

  • 「自筆証書遺言」
  • 「公正証書遺言」
  • 「秘密証書遺言」

の3種類に分けられます。

最も手軽なのは、被相続人が自分で紙に書き残す自筆証書遺言です。費用もかからないので多くの方が利用していますが、記載要件を満たしておらず無効になってしまうケースが多く見られます。

一方、公証役場という公的機関を通じて遺言書を作成するのが、公正証書遺言秘密証書遺言です。

公正証書遺言は公証人が被相続人から遺言の内容を聞き取り公正証書として遺言書を作成するので、要件不備等で無効になる心配がないのが特徴です。

同じように公証役場で作成するものの、遺言書自体は自分で作成する方法もあります。

この場合は遺言書を作ったという記録だけが公証役場に残され、遺言書自体は手元で保管することになります。

これが秘密証書遺言です。

遺言書の内容を亡くなるまで知られることなく公的記録に残せるというメリットはありますが、実際にはあまり利用されていません。

今回、法改正の対象になったのは自分で作成する自筆証書遺言の作成方法です。

これまでの自筆証書遺言とは

改正後の自筆証書遺言についてご紹介する前に、これまでの遺言書の作成方法について確認しておきましょう。

公証人が遺言の有効性や書式をチェックする公正遺言証書は、不備等が発生しないメリットはあるものの、遺産総額に対して公証役場へと手数料を支払う必要があります。

その点、自筆遺言証書であれば費用をかけずに自分で遺言書を作成できるので、誰でも気軽に正式な遺言を残すことが可能です。

しかし自筆遺言証書はその名の通り、遺言書の文言から財産目録まで被相続人がすべて自筆で書かなければなりません。

財産の内容によっては、財産目録だけでも膨大な量になります。

それらをすべて不備なく書き残すのは、煩雑かつ負担の大きい作業だと言えるでしょう。

苦労して書きあげたとしても、要件不備や財産目録の記載が不十分だと遺言書としての効力を発揮することができません。

被相続人手元で保管することから、遺言書そのものが発見されづらかったり、偽造・破棄されやすいという問題点もかねてより指摘されてきました。

それらの諸問題を解消するのが、今回の法改正です。

これからの自筆証書遺言

2019年1月に施行された自筆証書遺言に関する法改正において、最大の変更点は二つあります。

一点目は財産目録の作成において自筆ではなく、パソコンやワープロ等で作成したものが認められるようになったということです。

財産の詳細を明記する際に、銀行情報や土地の地番、有価証券の番号等の記載は必須事項です。

これらの目録を自筆以外で作成できることにより、遺言書を作成する際の負担が大幅に軽減されると言えるでしょう。

自筆に代わるものとして、預金口座のコピーや登記事項証明書の添付も認められるようになりました。

ただし、パソコン等での印字が認められるのは財産目録に限られるということは留意しておくべきでしょう。

遺言書本文は、以前と変わらず被相続人の自筆でなくてはいけません。

印字された財産目録も、各ページに署名と押印しておく必要があります。

これが欠けていると、方式不備として遺言書自体が無効になってしまいますので注意しましょう。

一方、法改正により新設された制度もあります。

従来の自筆証書遺言は保管形式が指定されていないため、被相続人が手元で保管するケースが大半でした。そのため、相続が発生したときに遺言書が見つけられなかったり、偽造されやすいという問題がありました。

2020年7月10日から施行される保管制度では、法務局が遺言書の形式をチェックしたうえで保管することが可能になります。

相続人は遺言書の内容や遺言書の保管証明を請求する権利を持ち、請求が発生した時点で他の相続人にも遺言書が存在することが知らされるので、より公正な相続執行が期待できるのです。

自筆証書遺言は家庭裁判所で「検認」という手続きを経ないと正式な公文書として認められませんが、保管制度を利用した遺言書は検認手続きが不要になることも決められました。

検認は申し立て後1か月以上の期間を要し、その間の相続手続きは完全にストップしてしまいます。

相続放棄の申述や相続税の申告期限は延長されないので、検認が不要になることでより手続きに余裕を持つことができるでしょう。

まとめ

この記事では、自筆証書遺言の法改正についてご紹介しました。

財産目録をパソコン等で作成できるようになるので、少ない負担で不備のない遺言書を作成することが可能になります。

完成した遺言書を法務局で保管できる制度もスタートするので、法務省令に添った形式かチェックを受けられるだけでなく、相続人にとってより公正でスムーズな相続手続ができるようになるでしょう。

遺言書の作成を考えている方やそのご家族にとっても、今回の法改正はメリットが大きいと言えそうです。

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