「終活」という言葉が市民権を得てから、もう随分長い時間が経ちました。そしてその時間の流れのなかで、終活のかたちや終活に対する捉え方も変わってきています。
今回は、「終わらせるための終活」から「始めるための終活」への変化に注目して、現在の終活のあり方や、「始めるための終活」の仕方について解説していきます。
始める人はもう始めている、現在の終活について
「終活」という言葉はすでに市民権を得ていて、10人に1人はこの言葉を知っています。
また、終活を始めている人の割合も非常に増えていて、「すでに終活を終わらせている」「終活の一部はもう実施している」という人が4割以上となっています。
ただ同時に、「終活は必要ない」と考える人も4人に1人程度はいます。コロナ以前の2018年にとられた統計においては、「終活は必要である」と答えた人が81.1%であったにも関わらず、コロナ以降の2023年では77.1%に減少しているわけです。
また、「積極的に終活を行っている」という人が42.3%、「終活は必要ない」としている人が22.9%となってはいますが、残りの34.7%は「今後始める予定(だが今はまだ始めていない)」という中間層に位置しているといえます。
親が終活をしていたかどうかは、残されることになる子どもたちの負担を大きく変えるものです。子どもたちの立場からすれば「終活をしてほしい」ということになるのですが、それではこの残りの34.7%に積極的に終活をしてもらうためにはどうすればよいのでしょうか。
出典:ハルメク「終活市場の最新状況をリサーチ!シニアが求める終活サービスとは?」
従来の終活とは異なる、「始めるため」の終活を5つのステップで
「これから終活をしなければならないと思っているが、なかなか腰が上がらない」という人に対しては、従来の「終わりに向けての準備としての終活」ではなく、「これからの人生を始める手段としての終活」の提案が有効です(なおこの方法は、ご自身の終活を意識している人にも有用です)。
この「始めるための手段としての終活」を、従来型の終活と対比して解説していきます。
「人間関係を整理する」対「連絡先を分かりやすくする」
従来の終活は、年賀状じまいに代表されるような「不要な人間関係を整理する」が一般的でした。ただ、「まだ連絡するかもしれない」「相手の気持ちを考えると、急に人間関係を整理するのは控えたい」という人もいるでしょう。
そのような人におすすめの、新しい終活のかたちが「連絡してほしい人に対して、LINE/X/電話番号/住所 などを、ひとつのデータにまとめる」というやり方です。
今現在電話帳やSNSで繋がっている人との関係はそのままに、より連絡優先順・緊急連絡先の優先順が高い人をまとめて、その人たちと繋がる手段をまとめておくのです。
これは、終活をする人自身の混乱を防ぐ手だてともなりますし、残された家族の「だれに連絡したらいいかわからない!」を防ぐ有効な方法ともなり得ます。
「アルバム類などを手元に残す・処分する」対「クラウド上に保存する」
物を減らすことは終活の基本ですが、二度と同じものを取り戻すことのできないアルバム類は捨てられないものの代表だといえます。ただ、同時にアルバムは非常にかさばるものでもあります。
このように、「捨てなければかさばるが、捨てたくはないアルバム類」は、クラウド上に保存する方法を選ぶとよいでしょう。クラウド上に保存しておけばいつでも見返すことができますし、入院時にもスマホからいつでもアクセスできます。家族との共有も簡単です。
もっともクラウド上に保存した「データ」は消えてしまう可能性がないわけではないので、本当に大切な写真(アルバム1冊程度)は、クラウド保存+印刷して手元に残すというやり方がもっとも確実です。
「処分する」対「縮小する」
使わなくなった家電製品などを処分することは終活の基本であり、これは従来型の終活でも新しい終活でも変わりありません。
ただ、従来型の終活においては、「必要最低限のものだけを残して捨てる」という考えが取られていました。高齢者施設に入居するときには多くのものを置いていかなければなりませんし、亡くなった後に処分するのが大変だからです。
対して、新しい終活では、コンパクトなものに買い替えたり、2台のオーブンレンジのうち1台を処分したりするという方法を取ることが推奨されます。「捨てる」のではなく「縮小する」という考え方です。特に、「昔は大家族で住んでいたが、今は2人だけで暮らしている」などの場合は、この「家電の買い替え」が非常に有用です。
「子どものための資産整理」対「老後に使えるお金を増やすための財産整理」
「子どもが困らないために資産整理を行う」「子どもに遺産を渡すために、不要な不動産などを処分する」といった考え方は、終活において非常に重要なものです。また、子どもに対する親の思いを表す尊い行為でもあります。
ただ子どもがすでに独立していて経済的不安もなく、自立した生活を営んでいるのであれば、親は親自身の生活を豊かにするための財産整理をおこなってもよいでしょう。たとえば、不動産の現金化などがこれにあたります。
老後の生活をより充実したものにするために、使わない財産を処分し、いつでも動かせる財産にしておくのです。
「墓地の世話を頼む」対「墓地の世話を運営業者に任せる」
昔の日本では、「先祖代々の墓地を引き継ぐ」という考え方がありました。「祭祀継承者」という言葉が示す通り、仏壇やお墓、祀り事・法要などの世話を、子どもに託していたわけです。
しかし現在は、地元を出て新しい土地に居を構える人も多く見られます。また一人っ子の割合も増えたため、実家のお墓を継ぐことが難しいという場合もあるでしょう。加えて、親自身の宗教への帰属意識が薄い場合は、「そもそも子どもに墓守をお願いしたくはない」となることもあります。
このような場合は、従来型のお墓とは異なり、永代供養墓や納骨堂、樹木葬・海洋葬に代表される自然葬を検討することをおすすめします。
これらの選択肢の場合、基本的にはその世話は墓地の運営者が行うことになりますから、子どもに負担をかけることはありません。また、「今後子どもが地元に戻ってくることはなく、しかも一人っ子である」という場合は、従来の先祖代々のお墓を墓じまいすると、さらに負担が少なくなるでしょう。
まとめ
「自分の『終わり』がより良きものになるように、終活を行う」という考え方は、非常にすばらしいものです。終活を行っておくことで、その人が旅立った後に残された家族の負担を大きく軽減できるからです。
しかし、自分の「終わり」のためだけではなく、自分の「これから」のために行う終活もまた、大きな意味を持ちます。「自分のこれから」のために行う場合はモチベーションも保ちやすく、かつさまざまな選択肢から自分に合ったものを検討しやすくなるからです。
もちろん、従来の終活と新しい終活は、並行して行えるものです。自分に合った終活・親御さんに合った終活のかたちを提案していきたいものですね。
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