生前贈与を考える際のポイント

生前贈与を考える際のポイント

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生前贈与は、上手く利用すれば相続時にかかる税金を安くすることができるものです。
また、生前贈与ならではのメリットもあります。そして同時に、生前贈与ならではの注意点もあります。
ここでは、「生前贈与と遺産相続の違い」「生前贈与、2つの種類とその特徴」「生前贈与のメリットと注意点」について解説していきます。
「できるだけ節税したい」「家族が被る負担を最小限にしたい」という人は、ぜひご覧ください。

生前贈与と、遺産相続の違い

生前贈与と遺産相続は、両方とも「他者に遺産を譲る制度」であるという点は共通しています。
しかし生前贈与は、文字通り、自分が生きているときに財産を渡すものであり、遺産相続は自分が死亡した後に財産を渡すものである、という大きな違いがあります。
遺産相続は、遺言書がない限り、法定相続人にその財産が引き継がれます。また遺言書で「血の繋がりがなく、法定相続人ではない人に全財産を渡す」としていても、法定相続人は、通常受け取るはずだった遺産の2分の1あるいは3分の1の金額を遺留分として主張できます。
この意味では、生前贈与は遺産相続に比べて自由度が高いものだといえるでしょう(メリット・デメリットについて、詳しくは後述します)。

生前贈与、2つの種類

さて、生前贈与には

  • 相続時精算課税制度
  • 暦年贈与

の2つがあります。

それぞれの特徴について解説していきます。特に相続時精算課税制度は、2023年の改正の影響を強く受けた制度であるため、それについても詳しくその意味も交えてお話ししていきましょう。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、「60才以上の父母または祖父母から、18才以上の子どももしくは孫に対して、生前に財産を渡したいときに利用する制度」のことをいいます。
かつて相続時精算課税制度は、「合計金額2500万円(例:250万円×10年/2000万円1回+500万円1回など)までが特別控除の対象となる」というシステムでした。
しかし2024年の法改正によって、相続時精算課税制度は非常に使いやすくなりました。
今までは「年間に送る金額がいくら以下であっても総額で決まる」というものでしたが、改定時に「年110万円までの基礎控除」が新設されたのです。
下記であげる「暦年贈与」と、相続時精算課税制度のもっとも大きな違いは、2023年まではこの「年間基礎控除の有無」にありました。しかし法改正によって、相続時精算課税制度にも年間110万円までの基礎控除が加わったので、相続時精算課税制度は格段に使いやすくなったとされています。

ちなみに、基礎控除額を超えた分に対する課税額は、いくらであっても、一律20%と決められています。
なお、一度相続時精算課税制度を選択した場合、暦年贈与に切り替えることはできません。

暦年贈与

暦年贈与とは、「年間基礎控除額110万円が設けられている生前贈与」の制度をいいます。
相続時精算課税制度と暦年贈与との最大の違いは、「だれが、だれに贈っても基礎控除を受けられる」という点です。相続時精算課税制度では直系尊属から直系卑属、しかも孫までにしか渡すことができませんでしたが、暦年贈与の場合は「同性の恋人」「何年も付き合ってきた親友」「血の繋がりは薄いが、ずっと面倒を見てくれていた姪の子ども」などに受け継がせることができます。この自由度の高さが、暦年贈与の強みといえるでしょう。

ただし暦年贈与の場合は、相続時精算課税制度と同じく年間110万円までの年間の基礎控除額はあるものの、それ以上の特別控除額は設定されていません。しかも相続時精算課税制度の場合は、非課税限度額を超えた部分の贈与に対しては一律20%までしか課税されなかったのに対し、暦年贈与の場合はその額に応じて10%~55%の累進課税形式がとられます。
なおこの累進課税形式のかたちは、遺産相続時のものと同じです。
相続時精算課税制度と暦年贈与は、「贈与者(財産をあげる側)が同じである限り併用はできないが、贈与者が変われば併用はできる」という特徴を持っています。
たとえば祖父から相続時精算課税制度のかたちで財産を受け取っていた孫が、祖母からは暦年贈与のかたちで財産を受け取る、ということは可能です。

【相続時精算課税制度と暦年贈与の違い、早見表】

相続時精算課税制度 暦年贈与
財産をあげる人 60才以上の祖父母もしくは父母 だれからでもよい
財産を受け取る人 18才以上の孫もしくは子ども だれでもよい(血のつながりがまったくない人でもOK
控除額 年間で110万円まで、相続開始時までに2500万円まで(特別控除) 年間で110万円まで
控除額を超えた分にかけられる税金 一律で20% 累進課税方式で、財産の額によって10%から55%
申告の要・不要 110万円を超えた場合は申告の必要あり+初年度に相続時精算課税制度選択届け出を提出する義務がある 110万円を超えた場合は申告の必要があるが、それ以外は申告の必要なし

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生前贈与のメリット

上でも少し取り上げましたが、ここからは生前贈与のメリットについてより細かく解説していきます。

主なメリットは、

  • 相続財産の評価額が上がっても、その影響を受けない
  • 節税になることが多い
  • 税制改正が行われても、その影響が少ない
  • 法定相続人以外にも財産を渡せる

の3点です。

それぞれ見ていきましょう。

相続財産の評価額が上がっても、その影響を受けない

生前贈与のメリットのうちのひとつとして、「相続財産の評価額が上がっても、生前贈与した分の財産はその影響を受けないこと」が挙げられます。
不動産を相続するときには、その土地・建物の再評価が行われます。これは、路線価(路線・道路に面する宅地1平方メートルあたりの金額のこと)などを元に行われたり、家屋の固定資産税に基づいて行われたりするものです。

たとえば銀座5丁目の路線価は、2025年の段階で4808万円となっていて、40年連続で上昇しています。これは今後も続いていく流れだと思われます。つまり、「価値のある不動産を長く持っていて相続時にそれを引き継がせようとした場合、買ったときよりも非常に大きな金額で評価されるため、相続税が大きくなる」ということが考えられるのです。
しかし生前贈与によって早めに財産を引き継がせておけば、このような「財産価値の上昇による、相続税の増加」を避けることができます。

ちなみにここでは分かりやすく「不動産」をテーマにしましたが、有価証券などについても同じことがいえます。

※下記、「小規模宅地の特例」もご参照ください。

出典:健美家「路線価、全国最高値は40年連続で東京・銀座の「鳩居堂前」で過去最高を更新。上昇都市37、下落は1都市のみ。」

節税になることが多い

相続時精算課税制度であっても、暦年課税であっても、どちらの場合であっても、基礎控除があります。特に「年間で110万円までの贈与は、非課税となる」というのが、生前贈与の大きな特徴です。
そのため、たとえば非常に早い時期から生前贈与を始めた場合、多額の財産を非課税で引き渡すことが可能です。

例として、「23才のときから暦年課税方式を選んで、子どもに年間100万円ずつ生前贈与をしていった。63才まで毎年行い、80才で亡くなった」という場合、4000万円の財産を非課税で子どもに渡すことができるのです。若いときから長年に渡って財産をだれかに計画的に渡したいと考える人にとっては、生前贈与は非常にメリットが大きいものといえます。
ただ、下記でも詳しく述べますが、「相続時に引き継いだ財産が、すべて課税対象になる」という考えは間違いです。相続時にも基礎控除は発生し、3000万円+(600万円×法定相続人の数)以内の金額であれば、相続税は発生しません。

税制改正があっても、その影響を受けにくい

意外に思われるかもしれませんが、相続税などの税率に関する法律は、時代とともにかなり頻繁に改定されています。たとえば、上では「3000万円+(600万円×法定相続人の数)が基礎控除額として扱われる」としましたが、この計算式は、かつては「2000万円+(400万円×法定相続人)」であったり、「4000万円+(800万円×法定相続人)」であったり、「4800万円+(950万円×法定相続人)」であったり、「5000万円+(1000万円×法定相続人)」であったりしました。
そのときどきの社会情勢によって、基礎控除額の金額も変わっていっているわけです(ほかにも変更点は多くあります)。
相続時にどれだけの基礎控除が受けられるかは、法律の変更によってたやすくかわってしまうのです。

しかし生前贈与を選んでおけば、「現在の」法律に基づいて財産を渡すことができます。そのため不安定さがなく、現行法をしっかり勉強して、専門家の手を借りて対応できれば事足りるのです。

出典:レガシィマネジメントグループ「相続の知識|相続税の基礎控除とは?計算の仕組みや改正の歴史を解説」

法定相続人以外にも財産を引き継げる

生前贈与のもっとも大きなメリットとして、「法定相続人以外にも財産を引き継がせられる」という点が挙げられます。
暦年贈与の場合は、贈与する側・贈与を受ける側の年齢や属性、関係性が問われず、だれに対しても自由に贈与ができます。
相続時精算課税制度は直系卑属かつ孫までで、かつ贈与側が60才以上であり、贈与される側が18才以上であるという制限がつきます。その意味では、暦年贈与よりも、制限は厳しいといえるでしょう。また、相続時精算課税制度は、「直系卑属にのみ限られる」ということから、死亡時の相続と変わらないのではないか、と思われる人もいるかもしれません。
しかし死亡時の相続の場合は、子どもが生存している場合、その子どもを飛び越して、孫に遺産を渡すことはできません。祖父母→孫への遺産相続が可能になるのは、「祖父母に先駆けて祖父母の子ども(孫にとっての父母)が亡くなっているとき」です(代襲相続)が、生前贈与を利用すれば、子どもが生存している段階でも、孫に直接財産を渡すことができます。

なお、死亡時の相続であっても、法定相続人以外に財産を引き渡すことは可能です。遺言書を事前に作成し(※形式を守る必要がある)、財産を相続する相手を指定すればよいのです。
しかし相続の場合は、直系尊属(父母や祖父母)のみが相続人となる場合は元々引き継ぐはずだった財産の3分の1を、それ以外の立場(配偶者や子どもなど)が相続人となる場合は2分の1を遺留分として請求できます。そのため、「すべての財産を、確実に、自分が思う人に相続させること」はできないのです。

だれに対してできる? 注意点 自由度
暦年贈与 だれにでも
相続時精算課税制度 18才以上の子どももしくは孫 贈与者は60才以上の祖父母もしくは父母
死亡時の相続・遺言書あり だれにでも 法定相続人は遺留分の請求権を使い、本来相続する財産の3分の1あるいは2分の1を取得できる(行使しないことも可能)
死亡時の相続、遺言書なし 法定相続人

死亡した人の親族関係によって法定相続人は変わる。
「内縁の配偶者」は法定相続人にはなれない

※本来法定相続人の立場にある者であっても、欠格事由(詐欺や強迫、殺害やそれに類する行為、遺言書の偽造など)があった場合は、法定相続人の立場を失う

生前贈与がお得になったって本当?令和6年の改正を見る

生前贈与の注意点

生前贈与はメリットも多いものですが、注意点もあります。それを最後に見ていきましょう。

相続税の課税対象とならないのは7年以上前に相続した財産に限られる

生前贈与で贈与された財産は、基本的には相続税の課税対象とはなりません。
しかし、「亡くなる7年前以内に生前贈与された財産は、相続税の課税対象となる」という決まりがある点には注意が必要です。
これは2024年以降に施行された法律です。法改正前は、「亡くなる3年前以内に生前贈与された財産は、課税対象となる」というものでしたが、それが7年に延長されたかたちです。
ただしこれは、「2024年以降の贈与」を対象とします。また、それ以降の場合も、段階的に遡る期間が長くなっていくかたちをとります。

生前贈与をした場合の方が、税金が高くなるケースもある

生前贈与は、遺産相続よりも基本的に税制面で節税になることが多いものです。しかしすべてがそのケースに当てはまるわけではありません。これを利用することで、逆に税金が高くなってしまうこともあるのです。

たとえば、生前贈与(相続時精算課税制度)にもデメリットがあります。
そのデメリットとは、「小規模宅地等の特例が使えなくなる」というものです。
小規模宅地等の特例とは、「相続税の計算時に、要件(住んでいた/事業を営んでいた/貸し付けていた、など)を満たせば、最大で評価額を80%減額して計算できる」というものです。
「昔安い価格で一等地に家を建ててずっとそこに住んでいたが、今は土地の評価額が非常に上がっている」などの場合は、相続時の土地の評価額がものすごく高くなってしまいます。その結果、納めるべき税金が非常に高くなることもあります。しかし小規模宅地等の特例を使うことで、このリスクは大幅に軽減されます。

また、詳細な計算は省きますが、1度に大きすぎる生前贈与を行った場合、遺産として相続するよりも税金が高くなってしまうことがよくあります。年間110万円の基礎控除が設けられている生前贈与ですが、大きすぎる金額を1度に渡そうとすると、この基礎控除の効果が十分に生かしきれません。

教育資金贈与などは、将来的に廃止されることになった

かつては、生前贈与に一部特例がありました。それが、「教育資金などに使う場合は、最大で1500万円までは非課税とする」というものでした。しかしこれは、「格差を拡大する」ということで、2026年の3月31日に廃止されることになりました。
また、結婚や子育てのための生前贈与も最大1000万円までは非課税とされていますが、これも2027年には廃止の予定です。

なお結婚や子育てのための生前贈与を2027年前に行う場合でも、使い切れなかった分には税金がかかります。また、その範囲もかなり限定的で、「小学校入学前まで」「贈与を受ける側が50才未満である」などの制限があります。加えて手続きがかなり煩雑なので、これを利用しようとしている人は、早めに動き始める必要があるでしょう。

生前贈与は、メリットも多くありますが、注意すべき点もあるものです。
決して「すべての点において、死亡時の相続よりも優れたものである」といえるものではありません。
しかし上手に利用することで、節税になったり、残していく人の負担を軽減できたりするものであることは確かです。

「自分には生前贈与が向いているのか、それとも向いていないのか?」などの相談は、ぜひ互助会にお持ちかけください。一緒に考えていく環境が、互助会にはあります。

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